お盆の季節は過ぎても、まだまだ猛暑が続きますが、皆さまにはご平穏でお過ごしのこととお慶び申し上げます。当院では、七月七日より八月までをお盆月間と定め、施餓鬼法要と塔婆建立により、皆さまの慰霊の志を先亡精霊へお届けさせていただきました。さらに、境内にはお盆飾りの一環としての笹飾りを用意し、祈願成就を願う参詣者さまより、多くの短冊を奉納いただきました。その願意は、絶えることなく世界のどこかで起こっている戦争や、米元大統領への狙撃事件などを反映してか、世界平和といった、世の無事を願うものから、家内安全や病気平癒、良縁成就、合格祈願、さらには亡き人への供養の気持ちを綴った個々の祈願まで多岐に亘ります。私どもはその願い事ひとつひとつに込められた皆さまの心境に想いを致し、お盆期間中の勤行にて謹んでご本尊さまにご回向させていただきました。 仏教では、願い事が叶うためには❶自分の力、❷仏さまの力、❸目に見えないものの力、この三力が肝要と説かれています。❶は、たとえば病気になったとき、治りたいという意思をもって病院に足を運び養生する、自分自身の力です。❷は、医者や薬、治療法といった、信頼し、おまかせできる他者の力です。そして❸は、家族や職場、近隣の人など、安心して養生できる環境を作り出してくれる、目に見えないさまざまなつながりの力、すなわち「おかげさま」の力です。 「咲いた花見て喜ぶならば、咲かせた根っこの恩を知れ」ー 私はいま五十六歳、両親も健在で、家族も無事でいてくれている、この一見なにごともない日々の喜びが、実は目に見えない無数の「おかげさま」の力によって与えられていることを、ようやく少しずつ実感し始めております。今年もまた秋のお彼岸がやって参ります。良き感謝のご供養に努めていただきたくご祈念申し上げます。合掌
南無大師遍照金剛
功徳院住職 松島龍戒