「叱られた恩を忘れず墓参り」
今年もお盆の季節がやって参ります。お盆は、長年日本で大切にされてきた年中行事ですが、近年では親戚が集ったり、迎え火、送り火をたいて、ご先祖迎えすることも少なくなりました。しかし、形式は変わっても、お盆は亡き人に感謝をささげ、日々の生活を省みる絶好の機会でもあります。そもそもお盆は、お釈迦さまのお弟子さまの物語が由来となっています。「目連尊者のお母さまは、我が子だけを可愛がり過ぎるあまり、餓鬼道地獄に堕とされてしまいましたー。」これがお盆の由来だと聞くと驚かれるかもしれませんが、この物語は、お釈迦さまの教えを受けた目連尊者が「万霊供養」を心がけるようになり、お母さまが救われたと結ばれています。思うにこの物語のテーマは「目連尊者の反省」ではないでしょうか。母を地獄に至らしめた原因が自分にもなかったか? 自分も親に甘え過ぎていなかったか? 子としてもっと母を助け、支えることはできなかったか? 何気なく暮らしている街の景色、それを遠くから眺めれば美の絶景に見えることもあるように、近しく暮らしている人の本当の姿や思いに、私たちは気づきにくいものです。亡き人を供養することで、あらためてその人の本当の姿を見つめ、心の中に息づかせる、それがお盆供養に込められた意義ではないでしょうか。お盆のお塔婆は、今はもう伝えることができない私たちのさまざまな思いを、感謝の仏語に換え、亡き人に届けて下さるお手紙です。この夏が、皆さまにとりまして良きご供養となりますようお祈り申し上げます。 合掌
功徳院住職 松島龍戒