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お知らせ

寺報 花だより vol.25 令和5年 花祭り号 より

2023年3月18日掲載

ありがたや 高野の山の岩かげに 大師はいまだ おわしますなる

 日本三大霊場のひとつ高野山は、平安時代の名僧・弘法大師空海が開いた高野山真言宗の総本山で、平成十七年には世界遺産に登録、宗教宗派を超え、世界中の人々が訪れる真言密教の聖地です。

 標高850メートル前後の山々に囲まれ、あたかも天空に浮かぶ広大な境内には、高野山のシンボル・高さ48・5mの根本大塔をはじめとする、無数の仏教建築や寺院が建ち並び、だれが呼んだか「日本のマチュピチュ」の比喩は、まさに言い得て妙です。

 人々を引きつける高野山の最大の神秘は入定信仰、すなわち「弘法大師が、ここ高野山で今も生きて、人々の幸せを祈り続けてくださっている」という世界でも希有な信仰なのです。

 私たち真言宗僧侶の多くは、この聖地に参籠修行して資格を取得するのですが、その修行の第一歩は、この入定信仰を信じることから始まります。が、寺に生まれ育ったわけでもなく、大学を出てまもなく、寝耳に水の心境で高野山に入山した当時の私には、恥ずかしながら、「今も生きていると言われても・・・」と、心の底から信じることはできませんでした。その気持ちに多少の変化が生じたのは、その数年後、さまざまなご縁を得て、三年間の高野山修行に励んでいたある日のことです。弘法大師の御廟「奥の院」にお参りした時、その前でお百度参りしているおばあさんをみかけました。その背中が丸くなっているのは、雪が積もる寒さのせいか、ご年齢のせいかわかりませんが、なにかお札のようなものを両手で抱き、素足で石畳の上をぴたぴたと、歩く音が聞こえてくるほどに、一心にお参りをされていました。そのお姿に接した時から私は、たしかにここにお大師さまがいらっしゃる。心からそう思えるようになりました。

 大切なご家族など、先立たれたかたのお姿は直接見て、触れることはできません。が、日々の生活で出会う何かを通じ、間接的にその存在を信じられる瞬間がきっと、どなたにも訪れることと存じます。

 来る春のお彼岸には、そんな亡き人のお姿を求め、お墓参りやお塔婆供養をしてみてはいかがでしょうか。

合掌
                                          功徳院住職 松島龍戒

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